食べるということ

外食が多いものの、時間のあるときはなるべく自炊するようにしている。東京にいるときは一人なので、大した料理はできないものの、焼き魚ともう一品くらいは作っている。

気をつけているのは、なるべく素材のままで食べること。トマトをまるかじりする、大根や山芋をおろす、茄子を焼くなどなど。狩猟者としての人類の末端であるという意識を眠らせたくない。

さて写真は3月24日、大阪の「山女庵」というお店へ行ったときのもの。ここは店主が仕留めてきたものをそのまま出してくれるという野趣あふれる料理屋さんである。サバ、なまこ、ウド、稚鮎、ウナギ、スッポンといったものを食卓にあげてくれるのだが、完全予約制で行ってみないとその日に何を食べさせてもらえるのかわからない。

まず出てきたのは鹿の内臓のお刺身。昨日、仕留めたばかりの鹿だったので、提供できたという。本当にラッキーである。以前、沖縄で山羊の刺身を食べた際は、独特のにおいに閉口した思い出があるのだが、鹿はまったく生臭くない。店の人の話によると鹿は雑食ではないので内臓も問題なく食べられるとのことだった。

続いて鹿肉のボイル。これまた予想外に柔らかく、滋味にあふれる。

野菜もまた絶品。写真には写っていないが、下仁田ネギはトロトロだ。

鹿肉のステーキは塩こしょうだけで存分に味わえる。素材さえよければ調理など必要ない。

最後はボタン鍋。猪の上質な脂に心震えるが、すでに胃の容量はマックスを超えていたので、大半は持ち帰らせてもらった。

普段の食事に気を遣っているとはいえ、多忙なときはコンビニで済ますこともある。そういった食生活を続けていると、僕らが口にしているものが信じられないほど多くの人たちの手を通して食卓にのぼっていることを忘れがちである。いろんなことを考えさせてくれる夕餉だった。