『飼い食い−三匹の豚とわたし』と『食の終焉』

われわれが口にしているものがどこで作られているのかを、ナレーション無しに描いたドキュメンタリーに『Our Daily Bread』(邦題=命の食べかた)という作品がある。

http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/

この映画の中で豚や牛の屠畜シーンがあり、動物たちは人の口にはいるために、いかなる形で生命が途絶させられるのかを見せてくれる。私たちは誰がどのようにして家畜を育て、どのように屠られ、解体され流通しているのかまったく知らない。現代の分業化された産業に組み込まれ、ブラックボックス化されているのである。

そんな食肉産業の実態にも視線を配りつつ、自らの体験ルポとして子豚を育て、自ら食すまでを追ったルポルタージュ内澤旬子氏の『飼い食い−三匹の豚とわたし』である。氏の『世界屠畜紀行』にも教えられることが多かったものの、この書物はさらに読みやすく、面白いうえ、いろいろ考えさせてくれるので、多くの方にお勧めしたい。

http://goo.gl/WWJP0

ネタばれになるので、あまり多くは語れないが、軽やかな文体にもかかわらず、考察は奥深い。われわれが隠蔽している「他者の生命を奪って生きているという事実」、われわれが見失った「循環する生命に対する畏敬の念」を思いおこさせ、そのうえ大規模化する畜産農家やグローバル経済化での競争に巻き込まれた畜産産業にまで取材は及んでいる。時をおいて、もう一度読み返してみようと久々に思わせてくれた書物だった。

グローバル経済がもたらした巨大サプライチェーンがわれわれに何をもたらしたのかを考察したポール・ロバーツ著『食の終焉』も手に取っていただきたい。

http://goo.gl/hrymh

知人の編集者が手掛け、送ってもらったものだが、ちょうど食い物のことばかり考えていた最中だったので、むさぼるように読んでしまった。スーパーマーケットで次から次へと篭に放り込むだけで、ありとあらゆる食材が手に入る現代だが、その背後で何が起こっているのか。知ってしまうと怖い部分もあるのだが……。