読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

日活100年記念『生きつづけるロマンポルノ』に行ってみた


5月12日より渋谷ユーロスペースではじまったロードショー。本当に行って良かった!!

詳しくない方はロマンポルノと聞いて、いかがわしいエロ映画を想像するだろう。ポルノと銘打っているものの、17年にわたり作られた1100本あまりのフィルムの中には、日本映画史に残る傑作が数多く含まれている。

1954年より制作を再開した日活は太陽族映画で一世を風靡。しかし映画離れから業績が急速に悪化し、映画制作を一時中断するに到る。
関係者たちは、数百倍の確率を勝ち抜いて日活に入社し往年の名監督のもと映画技術を身につけた助監督や卓越した技術を持つスタッフなどを擁するスタジオシステムを維持するため、成人映画の制作・配給に生き残りの道を模索した。斜陽化する一方の映画産業の中、限られた予算と知恵で日本映画の技術や伝統を守り続けたのが日活ロマンポルノだったのである。

ロマンポルノの監督は映画の途中に何度か濡れ場を挿入しさえすれば、あとは何をやってもかまわないという、マーケティングに支配された今の映画界では考えられないような自由を与えられた。そのためロマンポルノからは数多くの名監督が生まれたのである。

今回、チョイスしたのは初日の四回目である『(秘)女郎市場』と五回目の『天使のはらわた 赤い教室』。なぜなら上演後に両映画の監督である曽根中生氏のトークショーが行われるからだ。

1970〜80年代にかけて『嗚呼!! 花の応援団』『博多っ子純情』などの映画を撮った曽根中生監督は80年代後半にプッツリと消息を絶つ。巷では「多額の負債を抱え、ヤクザに殺された」「ダンプの運転手をやっている」などとの噂が飛びかっていた。そんな曽根氏が去年の湯布院映画祭で突然、公式の席に姿を現した。そして今般の映画祭にて、73歳になった伝説の監督の肉声を聞くことができたのである。

新聞報道によると、失踪してからはヒラメの養殖場で働いたり、競艇場で出会った男にお小遣いをもらって暮らした後、50歳を過ぎて九州大学に学士入学。現在は自らの持つ特許をつかった燃料の製造装置事業の収入で暮らしているという。

飄々としていながら、やはり目つきは鋭い方だった。頭の回転は速く、ホスト役である山根貞男氏の質問に笑いを交えて返答するなどブランクは感じさせない。四回目上映後の対談のやりとりは公式ホームページにアップされている。

http://www.nikkatsu.com/report/201205/001101.html

五回目終了後のトークショーでのやり取りの抄録を掲載してみる。山根氏の見事なツッコミと、曽根監督のとぼけた感じの返答の妙味を感じていただきたい。


山根:初期の作品である『(秘)女郎市場』それから『天使のはらわた 赤い教室』まですさまじい勢いで撮っておられます。調べてみますと、デビュー作から7年ちょいで33本の映画を撮った。すごい量です。
曽根:撮りすぎなんじゃない。
山根:当時は矢継ぎ早が当たり前だったんじゃないですか?
曽根:そうですね。終わるとプロジューサーが脚本を持って来きて、撮らないと怒られるんですよね。良い悪いなしなんです。
山根:「分かりました。じゃあ読まして下さい」じゃないんですか?
曽根:そんなこと言えないですよ。もう「これ撮れ」と。
山根:曽根さんがそれを読んで気にくわないとか自分には合わないとかはなし?
曽根:そうすっと自分で直しちゃう。
山根:それはいいんですか?
曽根:そうするとシナリオライターがものすごく怒るんです。
山根:よくあるやつですね。
曽根:二度をお前とはやらないと。シナリオライターもお金もらってるからしょうがないんですね。直さなきゃ撮れないから。だからこの『天使のはらわた 赤い教室』のラストシーンも石井隆さんとけんかになった。私がラストシーンを直しちゃったから。
山根:ラストシーンというと。雨上がりの中での別れのシーンですか?
曽根:みずたまりのところ。あれ、本当は男性の後に女性がついていく。それが延々と書いてある。
山根:蟹江敬三が立ってますよね。こっち側に。脚本では立ってない?
曽根:男の方に女性がついていくんです。いろいろ会話があって、女性も納得して。
山根:もう一度やり直そうと。
曽根:ほだされてついていく。私はその会話を全部切っちゃった。
山根:でもそれがあのドラマの決定的な違いですね。
曽根:だから怒られちゃった。

山根:7年間に33本も撮るというのは苦痛なことだったんですかね。そんなにいっぱい撮れるものかなと今だったら思うんですよ。
曽根:主張があるとなかなか撮れない。私なんかなんの主張もないからただ撮ればいい。山根:前回の話に出ました鈴木清順監督。外国の映画祭に行くと必ず彼の映画をいっぱい見た評論家や映画記者が、「あなたはこんなにいろんな傾向の違う映画をいっぱい撮っている。こういう風なバラエティのある企画はどういう風に考えるんですか」と聞く。鈴木清順さんは「私は企画なんか考えたことがありません」という。
曽根:私も考えたことがない。
山根:同じですよね。清順さんも次々撮っていらっしゃった。でもそういう質問が出るということは清順さんの映画にも独特の個性があるからですよね。同じ用に、曽根監督は次々撮るとおっしゃいましたが、曽根中生監督の映画も何か独特の個性が出ているじゃないですか。それはなんなんですかね? さっき主張がないと言っておられましたが。
曽根:それは隠してあるんです。今回(の映画祭に)は出ていませんが『色情姉妹』には本になかった三女というのが出てくる。その性衝動と暴力衝動を描いてみたかった。『女高生100人(秘)モーテル白書』の中にも女子高生たちのの暴力衝動が隠された形で入れてあります。
山根:それはシナリオにはない? じゃあ、いつも曽根監督は与えられたシナリオを料理するときに自分のやりたいことを入れちゃう。
曽根:そうですね、
山根:必ず?
曽根:大概のところに入っていますね。ああ、これは間違いなく私が撮った。そうでなきゃ忘れちゃいますよね。何撮ったか。

山根:話は飛びますけど、この水原ゆう紀さんという女優さんはほんの何本か出ただけで映画に出なくなりますよ。
曽根:なぜだかわかんない。
山根:そういうのはフォローしていない。
曽根:全然。
山根:さっき事情通の人に聞いたら今は占い師をやっておられるらしい。
曽根:じゃあ占ってもらおうかな。
山根:面白い女優さんがいっぱいいたんじゃないかなと思うんですよ。ロマンポルノの俳優は他の会社の映画にはない強烈な個性を持っている人がそろっていたと思うんですけれども。
曽根:どういうことかわからないですね。それは私も。
山根:そいういうのは監督達が魅力的に見せたんだと思うんですよ。
曽根:そうじゃないと思うんですよ。自分が裸になるという、男の俳優だって裸になることは結構恥ずかしいことだと思うんです。覚悟を決めてやらないとできないことだと。いい加減にはできない、その覚悟が芝居の中に出てるんです。
山根:そうか。
曽根:覚悟を決めた顔が芝居の中に出ている。
山根:それが迫力になっている
曽根:そうだと思います。
山根:そこでお聞きしますけど、曽根監督はからみのシーンは結構細かくやるんですか?曽根:いや、あんまり。もうそれは普段みんなやってることだから、ほっとけばやるだろう。
山根:そうですかね。
曽根:手をあげて、あれしてなんてやってられないでしょう。
山根:でも結構細かく指導する監督もいるんじゃないですか?
曽根:そしたら自分のセックスの形をばらしてるようなもんじゃないですか。その男優と女優しかできない気の合い方とかそっちの方が重要だと思うんです。

今年秋には曽根監督の自伝も刊行されるという。
ぜひ再びメガホンを取って欲しいものだ。